今月の24日ですが、以前図書館で借りた「菊次郎の夏」を見ましたので、それを書きます。
夏になったら絶対見たいと思っていた映画なので、やっと見る事が出来ました。
他にも夏を題材にした映画やアニメを色々見たいですが、経済的な理由で難しいかも(図書館にあったり、YouTubeやニコニコ動画で視聴出来れば、話は別ですが)。
スタッフ 監督、脚本 : 北野武
音楽監督 : 久石譲
プロデューサー : 森昌行、吉田多喜男
編集 : 北野武、太田義則
キャスト
菊次郎 : ビートたけし
正男 : 関口雄介
バイクの男(デブのおじちゃん) : グレート義太夫
バイクの男の友人(ハゲのおじちゃん) : 井手らっきょ
あんちゃん(やさしいおじちゃん) : 今村ねずみ
ストーリー
夏休みなのに小学生の正男は、元気がない。
父親を幼い時に亡くし、たった1人の家族のおばあちゃんは仕事が忙しくて、中々相手してくれる人がいないからだ。
そこで遠くで働く母親に会う為に、1枚の写真と住所を手がかりに出かけようと思いつく。
心配した近所のおばさんは、暇をもてあます旦那の菊次郎に送り届ける様、命令する。
2人の旅が始まったが、菊次郎は完全にチンピラで金遣いが荒く、妻からもらった旅費どころか正男の小遣いもろとも使い果たしてしまう。
だがそんな時正男が運悪く少年愛者の変質者に襲われてしまうが、菊次郎は正男を助けて、変態を叩きのめしたのだった。
その後も様々な人々との出会いや別れを繰り返しながら、2人で協力して母親を探していく内に、愛情が芽生え始めていく。
長い冒険の末、菊次郎と正男は正男の母がいる家に到着したが、彼女は既に別の男性と結婚し子供までいて、新しい家庭を築いていたのだった。
菊次郎は正男を気遣って、「どうやら、違う家だったみたいだな」と慰めるが・・・。
レビュー
ビートたけしこと北野武さんが、監督、脚本、編集、主演をこなしたロードムービーで、第52回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式参加作品。
これまでのたけしさんの映画では鋭利なバイオレンス描写があったそうですが、今回はそれを排して、笑いや涙もあるヒューマンタッチの温かい作品となっています。
前半は母親探しの旅をやりつつも、菊次郎の傍若無人な振る舞いに、正男が苦労する様が描かれるのですが、後半では今まで出会った人達との再会が描かれています。
再会した後、みんな童心に返ったかのように、だるまさんがころんだや釣り、ターザンごっこなどをして遊ぶ内に、いつの間にか親しくなり、友情や絆が芽生えていきます。
前半も勿論良かったですが、私としてはこちらの方が面白くて、印象に残りました。
失ったものはあまりにも大きかったけど、代わりに得たものも大きかったというべきでしょう。
スタジオジブリ作品でお馴染みの久石譲さんの音楽も素晴らしく(実は同じくたけしさんの映画である、「あの夏、いちばん静かな海。」から「Dolls」に至る7作品の音楽を手掛けているそうなので、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画で例えると、バーナード・ハーマン氏みたいな感じでしょうか)、夏になったら1回は見てほしい映画です(本当にキャッチコピーの、「たくさん遊んで、すこーし泣いて。」の通りの映画です)。
ただ出演者の1人が、AV女優のつかもと友希さんだったのは驚きましたが(笑)。
予告編です↓
ちなみに主人公の菊次郎とは、たけしさんの亡き父親で塗装職人だった、北野菊次郎さん(1899 - 1979)からとったものです。
どうして実父の名前を?と思いますが、たけしさん曰く「小さい頃は「おやじがいると一気に家庭が締まる」存在だったが、「最近になって、孤独だったんだって思うようになった…。自分の思っていることを素直に出せないだけ。」 だからこそ家族で夏休みを楽しく過ごすことはしないし、できない、そんな不器用で照れ屋な男性の代表として名付けた」との事です。
劇中では正男のお供だったはずの菊次郎が、自分の夏休みを楽しんでしまうわけですが、その楽しみ方の半分は、父親と過ごした遠い夏の日の想い出で、残りの半分は望みながら果たせなかった夢の現実として描いているようです。
なので菊次郎と正男は、たけしさんとその父親自身と言えます。
一見子供とおっさんの面白冒険物だと思ってしまいがちですが、これは小さい頃両親が離婚し、悪い意味で子供のまま大人になり(だから中年親父なのに、少年と書かれている)、母のような強さを持つ嫁さんの世話になっているダメ人間だった主人公が、自分と似た境遇の正男と出会った事で、それが変わっていく話でもあります。
大人になりきれなかった大人の成長物語といえば、「ジュラシック・パーク」のアラン・グラント博士(演:サム・ニール氏)と共通しています。
出典
参考サイト